
最近は、さまざまなところで「居場所づくり」に関する取り組みが行われています。
こども家庭庁がすすめる「こどもの居場所づくり」や、厚生労働省がすすめる地域サロンなどの通いの場づくりなどなど。
これらの政策は、私たちが社会の中で自然なつながりを持ちにくくなっているからこそ取り組まれています。
では、なぜ私たちは普通に暮らしているだけでは、こんなにもつながりを持てなくなってしまったのでしょうか?
未婚や少子化、地域のつながりの希薄化、働き方の変化などなど。
原因はたくさんあります。
しかし、その根幹にあるのは、社会の分業化・専門化が進んだことではないかと思っています。分業化・専門化がすすむと、私たちは「ある目的ごとに共同体(コミュニティ)をつくる」ようになります。
わかりやすいのは、暮らしと仕事の分離です。
今では「働く=勤める」が当たり前ですが、1955年には、自営業主と家族従業者を合わせた人数は2,312万人。雇用者の1,778万人を上回っていました。
つまり、かつては家で暮らし、家族で働くという人が、今よりもずっと多かったのです。その後、自営業主や家族従業者は減少し、雇用者は1990年代にかけて大きく増えていきました。
こどもの居場所も同じです。
例えば、こどもの習い事。習い事をしている小学生は、平成元年には約40%だったものが、30年後には約80%と倍近くになったという調査もあります。近年では、小学校入学前から習い事を始める子どもが5割を超えるという調査もあります。
このように、家族、仕事、趣味、習い事などなど、私たちの関わるコミュニティは分業化・専門化され、特定の「〇〇のため」のコミュニティが増えています。
これらは一見、悪くないように思えます。
仕事のための場。
学びのための場。
子どものための場。
高齢者のための場。
困っている人を支えるための場。
それぞれに意味がありますし、必要な取り組みでもあります。
しかし実は、社会の中で「〇〇のため」のコミュニティが増えていけばいくほど、私たちは「居場所がない」と感じることも増えているのではないでしょうか。
それはなぜでしょうか?
簡単です。
「〇〇のため」のコミュニティは、「〇〇」でなければ参加しにくいからです。
「子どものため」のコミュニティに、私のような中年男性は参加しにくい。
「高齢者のため」のコミュニティに、若い人は入りにくい。
「子育て世代のため」のコミュニティには、子育てをしていない人は入りにくい。
また、「子ども」でなくなってしまったら、その場からは卒業しなければいけません。
会社も、そこで働く人でなくなったら、もう参加することはできません。
つまり、目的がはっきりしている場ほど、そこに入れる人と入れない人を分けてしまうのです。
だから、政策として「〇〇のため」の居場所をつくることは大切だと思いつつも、それだけでは本当の意味での居場所にはならないのではないかと思っています。
「居場所づくり」において本当に大切なのは、この「〇〇のため」を少し乗り越えることです。
そのために重要なのは、「〇〇もいていい」場所をどうつくるかです。
「子どものため」ではなく、子ども「も」いていい。
「高齢者のため」ではなく、高齢者「も」いていい。
困っている人も、困っていない人「も」いていい。
そんな場所です。

私は週末農業サークルを運営しているのですが、そこには大人から子どもまで、多世代が集まっています。
コンセプトは、一緒に農的な暮らしを楽しむことです。
でも、そこに「こどものため」や「シニアのため」といった取り組みはありません。
自分たちがやりたいことをする。そこに子どももいていいし、学生もいていい。社会人も、シニアも、未婚者も、既婚者もいていい。
実は、居なくてもいい。
でも、居ると嬉しいし、助かる。
そんな場です。
来た人たちは、その場でそれぞれに楽しんでいます。
大人は大人で楽しんでいる。
子どもは子どもで楽しんでいる。
誰かを楽しませる「〇〇のため」の取り組みがあるわけではありません。
それでも、子どもたちは等身大で自然と触れ合い、多様な大人と出会い、一緒に何かをする経験をしています。
大人たちもまた、自分の役割を自然に見つけたりしています。
そんな場が、もう30年弱続いています。
はっきりと「ここは居場所です」と言ったことはありません。
でも、気づけばなんとなく居場所になっています。
「あなたのために用意しました」と言われる場所は、本当の居場所になりえるのでしょうか。
「いなければならない」わけではないけれど、いてもいい。
役割が決まっているわけではないけれど、いると嬉しい。
ほんとうの居場所は、そんな「いてもいい場所」で見つかる気がしています。
文・NPO法人市民協働ネットワーク長岡 理事 唐澤 頼充
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