AIに気を遣う | 志渡澤美沙 | 今日どう?通信

当法人が長岡市と協働で運営している「ながおか市民協働センター」では、長岡市内のタイムリーな市民活動の情報をまとめた「らこって」という冊子を毎月発行しています。私は「らこって」を毎月約800の宛先にお届けする業務を担当しているのですが、業務を担当してそろそろ1年経つにも関わらず、全く慣れない作業があります。それは、運送会社のAIに集荷依頼をすることなのです。

らこっての集荷依頼は、まずフリーダイヤルに電話をかけるところから始まります。ナビゲーションを頼りにボタンを押していくと「AIが受付いたします。集荷の依頼でよろしいでしょうか?」と尋ねられます。「はい」と答えると、自動的にその返答に沿っていくつか質問が投げかけられるのです。人間の音声を認識して返答できるなんてすごい!と、私は最初感動していました。

ですが、例えば「できれば今日の夕方5時半までに来てくださるとうれしいです」などと言ってしまうと最後。「認識できませんでしたのでコールセンターにお繋ぎします」と言われてしまいます。その後、コールセンターのお兄さんに要件を尋ねられ上手な返し方が分からず「AIと会話ができずコールセンターに繋がってしまいました…」と伝えた結果、謝らせてしまったことがあり…それ以降私は、運送会社のAIに気を遣い「はい」「いいえ」「(他に要件は)ないです」辺りの、AIが判別しやすそうな単語しか発しないようになりました。

AIに気を遣うこの作業に慣れない日々が続いていたのですが、次第にAIに対するもどかしさも感じるようになりました。例えば「できればこの時間帯にお越しいただけるとスムーズに対応できます!」とか「今回の集荷は少ないので台車は必要ないですよ~」とか、ちょっとした一言が伝えられないのがもどかしくて。その一言は、きっと双方にとって良いことを生むはずなのに、AIが窓口だと「AIはきっとわかんないだろうな…いいや!伝えないでおこう」となってしまっていて、非常にもったいないなと感じるようになりました。

最近のAIの進歩には確かに目覚ましいものがあります。でもきっと、私が毎月抱いているこの痒いところには、しばらく手が届かないのではないかと思うのです。そして同時に、私たちが関わる市民協働という分野にも、AIはきっと到達できないだろうと思うわけです。AIが得意とする膨大なデータ処理や分析はそちらにおまかせしつつ、私たちは人と人が会話する中で生まれる気遣い、相手を思いやるちょっとした一言をいつまでも大事にしたいものですね。

文・NPO法人市民協働ネットワーク長岡 事務局 志渡澤美沙 

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「今日どう?通信」はNPO法人市民協働ネットワーク長岡の事務局・理事その他関係者が、市民協働をテーマに日ごろ感じたこと、気づいたことをしたためるリレーエッセイ・コラムです。

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