妖怪のおかげ| 栗林 渓 | 今日どう?通信

私は昔からゲゲゲの鬼太郎が好きで、子どもの頃は物語やキャラクターに興味が向いていましたが、大人になるにつれて、漫画家・水木しげる氏の生き方にも関心を持つようになりました。
いつか故郷である鳥取県を訪れてみたいと思っていたところ、先日その願いが叶い、水木しげる記念館にも足を運ぶことができました。記念館はどこを見ても見応えがあり、数時間では見切れないほど。数ある展示の中で、特に心に残ったのが次の言葉でした。

「人間は植物や虫や妖怪なんかといっしょにくらして初めて、精神のバランスが保てるのだ」。

人は人間だけでは完結できない存在なのだと、改めて気付かされる言葉でした。
私たちは便利さや効率を追い求めていくほどに、生き物や姿の見えにくい存在との距離を広げてきたのかもしれません。

植物の世話をしたり、虫の気配に季節を感じたり、名前も知らない何かに想像を巡らせたりする時間は、一見すると生産性とは無縁に見えます。
ですが、そんな時間こそが心を落ち着かせ、視野を広げてくれることがあるのだと思います。
水木しげる氏が妖怪を描き続けたのも、人間中心の世界からほんの少し離れた場所に心地よさを見出していたからなのかもしれません。

人との関わりについても、どこか通じるものがあるように思います。
価値観の近い人たちだけで集まっていると、一見楽なようで、ふとしたときに窮屈さを覚えることがあります。
考え方の違う人、歩調の違う人、言葉にしづらい思いを抱えた人——
そうした多様な人たちと、ゆるやかに関わり合いながらつながることで、かえって自分自身の輪郭がはっきりしてくることもあります。

すべてを分かり合おうとし過ぎず、理解しきれない部分を残したまま同じ場を共有する。
その余白があるからこそ、関係を長く続けることができるのかもしれません。

文・NPO法人市民協働ネットワーク長岡 事務局 栗林渓

◆―――――――――― ◆

「今日どう?通信」はNPO法人市民協働ネットワーク長岡の事務局・理事その他関係者が、市民協働をテーマに日ごろ感じたこと、気づいたことをしたためるリレーエッセイ・コラムです。

感想など、お気軽にコメントなどでお寄せ下さい。