おいしい共通言語 | 田中佳苗 | 今日どう?通信

私の夫は越路で農園を経営しており、農産物のほとんどを自社の直売所で販売しています。

夫の実家で同居するようになってからは、毎年少しずつですが私も農園の仕事をお手伝いしています。開店前から行列ができる夏の期間は、直売所にも立ち、お越しになるお客さんとお話しする機会もありました。

実は、直売所に立ってお客さんとお話しするのが密かな楽しみで、毎年夏がくることを待ち遠しく感じています。

直売所にいると、偶然来店したお客さん同士がご近所だったりして、買い物もそこそこに「最近顔見ないと思ったけど元気だね」などと会話が弾んでいました。

メロンを買いに来たお客さんが偶然会ったお隣さんに「いつも世話になってるし、このメロン食べてよ!」と買ったメロンを渡していたこともありました。その後、入れ違いで入ってきた方がメロンをもらった方の知り合いで、「さっきメロンをもらったから…」と今度はその方がスイカを買って渡していたことも。

最初にメロンを買った方は、翌日も来られて、たくさんメロンを買ってくださいました。

「たくさん買ってくださってありがとうございます。」と声をかけると「ここにくると知り合いがいるから、楽しいよね。メロンもたくさん買ったって口実で今からいろんな人のところに会いに行くんだよ~」とお話ししてくれました。

義父母たちが大事に開いてきた直売所は、義父母たちに会いに来るお客さん、ご近所さんなど…いろんな方がきては、「最近どう?」と店先で会話をしています。

少し変わりますが、街中にお住まいのご夫婦とお話ししていたとき「今は個人店も少なくなってしまって、行く場所がなくなってしまった。以前はお店にいくと店先でお茶を出してくれて、そこでちょこっと話して帰ることが、地域の中にある居場所だと思っていた」とおっしゃっていたことを思い出しました。

地域にお店を開き続けることの良さは、地域に暮らしている人の顔が見えることや、知っている人に会えるという安心感のようなものも提供しているのかもしれないな、と思いました。

夏に行う地域の祭りでも、屋台巡行の休憩所としても作業場を一部開放し、スイカを振舞っていたり、地域の中でお店や場を開き続けている夫家族には尊敬しかありません。

そういうふうに、特定の地域で誰もが知っているモノやコトがあることで、地域内の“共通言語”のようなものが増えていき、地域の人と人をつなぐものへと変わっていくのだと思います。

文・NPO法人市民協働ネットワーク長岡 事務局 田中 佳苗

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「今日どう?通信」はNPO法人市民協働ネットワーク長岡の事務局・理事その他関係者が、市民協働をテーマに日ごろ感じたこと、気づいたことをしたためるリレーエッセイ・コラムです。
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