
あなたは、人生の「もしも」に備え、どんな貯蓄をしていますか?
「老後に必要なお金は〇〇円」
「子どもを1人大学まで育てるのに必要なのは◯◯円」
「NISAで毎月◯◯円積み立てよう」——
子どもが小学校から持ち帰ってくる保護者向けのチラシにも「マネー講座」が年何回も入ってきます。今、世の中のそこかしこで、金銭的な不安が強調されている気がしてなりません。
もちろん、経済的な安定は大切です。若いうちから「お金を稼ぐスキル」や「資産形成」が重要視されるのも当然でしょう。けれど、お金を稼ぐスキルと同じくらい、いや、それ以上に価値を持つものとして、「人間関係を耕し、関係性を豊かにするスキル」がある、と私は強く感じています。
先日、友人の結婚式に参列してきました。
海辺のカフェであげた、手作りの結婚式でした。カフェを貸し切り、司会から装飾、演出まで、すべて友人たちのサポートを受けて手作りで準備を進めた、非常に心温まる式でした。また、参列者も、よくある結婚式の参列者とは少し違います。歴代の友だちというよりは、いま彼が普段から足を運んでいる複数のコミュニティの人たちが集まっていたのです。彼の暮らしをとりまいているつながりの豊かさが感じられる雰囲気でした。
通常、結婚式には数百万円もの費用がかかります。プロにサポートしてもらう結婚式もまた特別な一日でしょう。
けれど、いくらお金を払ったとしても彼のようなアットホームで心温まる雰囲気の式はできないだろうな、とも思いました。この式は、彼が日頃から地域活動に顔を出し、人間関係を「耕して」きたからこそ実現した、まさに「お金では買えない」価値のある式でした。
社会には、お金を介さなくても実現できる豊かな暮らしがたくさんあります。実は、その友人は障害者雇用で働いています。なので、お金を稼ぐ力だけを比べたらそれほどではないかもしれない。けれど、彼の人間関係を耕す力は、それを補って有り余るほど素晴らしいものだと感じました。

人間関係を耕す力は、お金を稼ぐ力とは違うけれど、お金と同じくらいかそれ以上の価値を生み出す力です。仕事で成果を出し、収入を得ることはもちろん素晴らしいことです。けれど、それだけに固執せず、市民活動などを通じて人間関係を耕すことで、生活の選択肢が広がり、より多様で豊かな人生を築くことができます。
人間関係の構築は、困ったときに助け合える「セーフティネット」としても機能します。現在の社会では、お金を払うことで問題が解決される場面が増え、気軽に助けを求めたり、誰かを助けたりする機会が減っていると言われます。しかし、市民活動のような場では、人々がそれぞれの得意分野で助け合い、頼り頼られる関係を築くことができます。そして、そのつながりは、自分自身を守り、人生を楽にするための「保険」のようなものであり、困ったときに頼れる選択肢を増やしてくれるはずです。
友人の結婚式は、お金では決して測れない、人間関係の深さとその無限の可能性を改めて感じさせてくれました。Hくん、結婚おめでとう!
文・NPO法人市民協働ネットワーク長岡 事務局 唐澤 頼充
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「今日どう?通信」はNPO法人市民協働ネットワーク長岡の事務局・理事その他関係者が、市民協働をテーマに日ごろ感じたこと、気づいたことをしたためるリレーエッセイ・コラムです。
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