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[きょうどう?通信]
市民活動の原動力とは
市民協働ネットワーク長岡の事務員になって、もうすぐ1年。
入職した当初は、右も左も分からず、初めて触れる経理や会計の知識を詰め込む毎日でしたが、半年ほど経った頃には何となく仕事にも慣れて(もちろん苦戦することは多いですが)、協働センターを利用してくださる長岡の協働の先輩方からのお話を楽しみながら勉強させていただけるようになりました。
しかしその一方で、当法人に関わってくださる方々の活動に、心の底から寄り添えない違和感を抱えていました。「私は自分の仕事や趣味、暮らしを管理するだけで大変なのに…。長岡のために、地域社会のために活動しているなんて凄いな…。その原動力はどこから来ているのだろう?」そのような違和感を抱えながらも次第に「私は事務員だからまずは淡々と事務をこなすことに集中しよう」と思うようになっていました。
しかし、最近少しだけ心境の変化がありました。きっかけは、私が大好きな日本民謡です。
私は小さい頃から、日本の民謡に親しみながら育ちました。祖母の民謡教室でよく聴いていた三味線と尺八の音色が大好きで、生まれ育った京都市から長岡市に移住してからも、長岡市川口地域の津軽三味線グループにて、津軽民謡・新潟民謡等の唄を習ったり、グループの皆様と一緒に各種公演等に出演・活動したりするようになりました。
ただ、去年・今年は新型コロナウイルスの影響で、県内の民謡の会の多くが、感染予防の観点や練習場所の確保の難しさから、思うように活動ができない日々が続きました。高齢化が著しい民謡界で、活動が継続的にできないことは死活問題。さらには、担い手不足にも拍車をかけることになります。
今年5月に予定されていた民謡の大会も中止となり、ふと「このままでは、私の大好きな民謡の音色が、唄が、文化が、途絶えてしまうかもしれない」と感じました。そしてその瞬間、私の中で初めての感情がぶわっと溢れてきました。
「あ、この現状、ヤダな」「私が続けていかないと」と心の底から思ったのです。
コロナ禍で危機的状況に直面したことで、初めて「当事者」としての気持ちが芽生えたのかもしれません。こんなにも必死な感情は生まれて初めてでした。
そして同時に、これが「市民活動を始める原動力」になるのかもしれないとも感じました。
自らの見返りを顧みず、地域や社会の問題に立ち向かっていくこと。困っている誰かに手を差し伸べること。そしてそれらを継続していくこと。それは、「社会のために」「誰かのために」のみ行うことだと今まで思っていたのですが、同時に「自分のために」行うものでもあるのかもしれないと気づいたのです。「この状況に我慢ならん!」そんな自分自身の意思に突き動かされて、長岡の人たちは今まで、自分の地域を、自分の大切な人たちを想って活動し、協働してきたのかもしれない。そう考えるようになりました。
この経験を得たからこそ、長岡で市民活動に携わる方々の気持ちに、今までよりほんの少しだけですが、近くで寄り添わせていただけるような気がします。事務員として業務をこなすことはもちろん大事。でも今では、協働ネットの一員として、自分なりに笑顔いきいきの街づくりに関わっていきたいと思っています。
そして長岡の協働の先輩方のお話がもっと聴きたい今日この頃。誰かと気軽に会える世の中が早く戻ってきますように。
文・NPO法人市民協働ネットワーク長岡 事務局
志渡澤 美沙
「今日どう?通信」とは 「今日どう?通信」はNPO法人市民協働ネットワーク長岡の事務局・理事その他関係者が、市民協働をテーマに日ごろ感じたこと、気づいたことをしたためるリレーエッセイ・コラムです。