学生と大学との協働でハッピーキャンパスライフを | 河村正美 | 今日どう?通信

私の所属する長岡造形大学では、全学生を対象にしたアンケート方式で「学生生活実態調査」を定期的に行っています。学生がどんなキャンパスライフを送り、それをどう感じ、不満や要望を抱えてないかなどを把握するためです。

「長岡造形大学で」「デザインを学ぶ」「今どきの」学生の実態と要望がそれなりに浮かび上がってはきますが、それを直ちに画期的で楽しく便利な学生生活の取り組みにつなげていくのはそう容易ではありません。

理由はいくつか考えられます。

・回答を短時間で記入するため、自分の本当の不満やその真因に想いを巡らすことができない

・設問自体がこれまでの結果に基づいて構成されていて、学生の答えが予測できるものも多い

・いつも出てくる要望は、実現には難しい問題を抱えており、その先入観もあって前に進まない

・不満→解決の着眼点→アイデア→実現といったプロセスにまで双方の意思が及んでいない……など

そこで、ある学生の声をきっかけに学生支援課の職員が他の学生たちとも相談しながら誕生したのが「ハピキャンコンペ」です。

「優先して取り組むアイデアを絞る」「実現までの具体的な手順を示す」、「提案者はプロジェクトの当事者となる」「プレゼンにより学生・大学双方の共感を得る」などが前提条件となっています。グランプリとなったアイデアには10万円が贈られ、学生・事務局・教員が協働で実現のためのプロジェクトを立ち上げます。わがNPOの「夢の種プロジェクト」の長岡造形大学版といったところです。

「アイデアを必ず実現する」ことを前面に出すことによって、学生たちの感性や構想力、造形力が全開し、「さすがデザインを学ぶ学生!」という感じのプロジェクトがたくさん出てきました。

思わぬ副次効果もありました。学生の就職活動の場面です。

「どうしてそのアイデアに至ったの?」「アイデアを実現するまでのプロセスは?」「最も苦労したところは?」「それをどう解決したの?」「この経験であなたが得たものは?」…

仲間や大学とともに取り組んだプロジェクトの経験とその中で学んだこと・身につけたことに、企業は強い関心を示します。

観察力と洞察力に優れ、違う感性や能力をもつ人たちの力を集めて新しい価値を創り出すことのできる力をもった人物かどうか。本学の「ハピキャンコンペ」や「地域協創演習」(現実の社会課題に企業や地域社会と一緒に取り組む科目)に対する姿勢と成果は、そうしたことを見極める格好の題材なのかも知れません。

 多様性と集合知を生かし、人々の潜在的なニーズを掘り当て、今までにない新しい価値の創出(イノベーション)が求められる社会や企業にとって、「協働する力と経験」は、ますますその必要性と価値が高まっていくようです。

文・NPO法人市民協働ネットワーク長岡 副代表理事 河村正美 

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「今日どう?通信」はNPO法人市民協働ネットワーク長岡の事務局・理事その他関係者が、市民協働をテーマに日ごろ感じたこと、気づいたことをしたためるリレーエッセイ・コラムです。

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