困った。困った、困った、困った。
お願いだから、何か答えてくれよ。
それだけじゃ、2,000字も記事書けないよ。
ある地域で大学生と協力しながら長く続いているプロジェクトの取材。
「人の入れ替わりがありながらも、こんなにも長くプロジェクトが続いている秘訣を教えてください」という私の質問に対する、区長さんの答えはこうだった。
「うーん、何にも考えてこなかったなぁ」
「課題を解決したい」「目標を達成したい」と思うとき。
それが市民活動であろうが、仕事であろうが、個人的な目標であろうが、結果や成果を求めるとき、私も含め多くの人が求めるものは、知識やノウハウ、テクニックではないかと思う。
市民活動で言えば、外向けに情報を発信することかもしれない。
はたまた、その発信内容をより訴求力のあるものに磨き上げることかもしれない。
「向上したい」と思う気持ち自体は悪くないと思う。
しかし結果や成果にこだわればこだわるほどに、楽しかったはずの活動は苦しいものになり、大切だったはずの想いや活動は、結果や成果を生むための道具と化す。
小雨が降り出したテラス。
記事作成のために動かしていたレコーダーの電源を切った。
このプロジェクトに3年間参加している大学生と区長さんが、楽しそうにおしゃべりしている。
あぁ、そうだったよなぁ。
取材をした日は、区長さんと、プロジェクトに関わっている大学の先生、別の用事で地域に来ていた大学生がバーベキューをしている日だった。
私が着くと、区長さんは奥さんが炊いたというお赤飯のおにぎりとコップに入ったお茶を私に渡し、地域に時々出るらしい熊や猪、猿の話をしてくれた。
取材では緊張しがちな私には珍しく、区長さんのとなり、居心地のよさを感じながら話を聞いていた。
私の個人的な感想は記事にはできないから、ここに書いておこう。
このプロジェクトが続いてきたのは、大学の必修授業だったとか、その授業の中でもこのプロジェクトは特に人気だとか色々な理由はあるけれど、大きな理由のひとつは、初めて会う人を快く受け入れ、まるで何度も会ったことがあるかのように接してくれる区長さんの人としてのあり方だと思う。
「まだ一口分あるから」
一口には大きすぎる入れ物に入ったお赤飯を私に渡し、区長さんの運転するきれいな水色の軽バンが走り去る。
猛暑で水不足が心配された夏、思い思いの形をしたかかしたちが、久しぶりに降った雨を楽しそうに浴びていた。
文・NPO法人市民協働ネットワーク長岡 事務局 須貝 友紀
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「今日どう?通信」はNPO法人市民協働ネットワーク長岡の事務局・理事その他関係者が、市民協働をテーマに日ごろ感じたこと、気づいたことをしたためるリレーエッセイ・コラムです。
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