【開催報告】「働きたい!暮らしたい!新潟をどうつくる?」セミナー

2月27日(月)にNPO法人市民協働ネットワーク長岡が企画運営する「働きたい!暮らしたい!新潟をどうつくる?」セミナーを開催しました。

会場であるまちなかキャンパスには30名近い方が参加。オンライン配信では、50名を超える方からのお申し込みがあり、新潟県の働きやすさや、子育て環境、住みやすさを高めていきたいというテーマへの関心の高さを感じ、満を持して開催しました!

人口減少が全国ワーストクラスのペースといわれている新潟県。地域課題を解決し、新潟で暮らす私たちや、移住者が求めるまちにするためには、企業・NPO・行政などの協働が不可欠!ということで本セミナーを通して、働き方改革や子育て支援の実践例や、協働のあり方を学び、 働きたい!暮らしたい!新潟をつくるために私たちができることを考えてみようという趣旨で行いました。

まずは、イントロダクション。
「働く・暮らすを豊かにするための協働とは」と題し、
長岡技術科学大学教授の上村靖司先生からお話をいただきました。

上村先生からは、新潟は地域のマイナス面や、課題を述べるネガティブキャンペーンを行いがちである。その結果、マイナスをゼロに近づけることはできてもプラスにはならないため、これからは元気な新潟をつくる人をどうつくるかという議論が必要。というお話がありました。

他にも、個性豊かな教え子たちを例に、社会の中で大なり小なりそれぞれに果たせる役割があることが、まちの豊かさを育むというお話しがありました。また、ご自身が取り組む研究や、代表を務める越後雪かき道場での経験をもとに、様々なお話がありました。

・地域課題が解決されるアイディアや活動を入り口にしながら、売れるものや経済活動につながってはじめて社会実装される。近年CSRやCSVという言葉が聞かれるが、企業にとっては利益となり、買い手も喜び、そして世の中の課題解決につながるような三方良しの取り組みが企業価値をより高めていく。

・企業側と研究者の双方に雪国での除雪中の事故が多いという共通の認識があった上で、ものづくりとアイディア出しというそれぞれの得意を持ち寄って行った事業は上手くいった。企業側と市民活動側での共通価値を創造していくことが大切。

・課題解決は目的ではなく世の中をよくするための手段であるため、取り組むべきは課題に対して前向きな主体の形成だと考えている。それには課題を自分事として捉える人たちが問題の本質をとらえ、必要な組織や仕組みをつくっていくこと。その中でそれぞれの違いを肯定し合える雰囲気づくりや、些細なことでもできることを持ち寄れる場づくり、そして課題を共有できる関係づくりを行っていくことが重要。

実践の中で、それぞれの主体の特性を踏まえポジティブに課題と向き合ってきた上村先生の姿勢がよくわかるお話しでした。

続いては、新潟県しごと定住促進課の鈴木さんから「新潟県の課題・移住者ニーズ」を共有していただきました。

新潟県では、R3年には前年と比べ2万4千人の人口減少があり、H9年をピークに24年連続減少。さらに社会動態といわれる転入出の差を示した数はR3で6千人転出が上回っており、転出理由は主に職業によるもの。全国的にはコロナ禍で地方移住が増加傾向とされるが、新潟県は例年に比べると、転入者数は増え、転出者数も減ったが、依然人口減少は止まらず転出超過数は全国ワースト4位であった。

転出者は20~24歳で就職するタイミングが突出しており、特に女性の転出数が多い。子育て世代も転入よりも転出数の方が上回っている。

また、移住者のニーズについては、学生が就職先に求めることとして、自分が学んだことを活かせる仕事があるかや、転勤がないこと、働きやすい環境が上げられている。子育て世帯は、自然、親など頼れる人、子育てのしやすさを重視していて、職種や働きやすさ、人間関係、気候に不安を感じているといったことが共有されました。

そして、企業と市民活動の分野、4名の登壇者による事例紹介。
トップバッターの一般社団法人地域創生プラットフォームSDGsにいがたで事務局を務める長谷部さんから「県内企業の働き方改革の全体像と事例」についてお話しいただきました。

SDGsにいがたの会員割合は7割が法人、そのほか各種団体や学校関係が入会。その中で、ゴール5のジェンダー平等に取り組む企業は60/169社あり、子育て世代が働きやすい職場となるように取り組んでいる施策は、育休・時短勤務や、男性への取り組み、次いで機運の醸成やテレワークなどの取り組みが行われている。今年度の新潟SDGsアワードは企業と地域の協働事例であったということが紹介されました。

株式会社ユニークワン 代表取締役社長 立川さんからは、「U・Iターンのキャリア女性が集まる実践企業の採用戦略」というテーマでお話しいただきました。

地方のNEWエリートを雇うことを目指し、自分が働きたいと思える会社づくりを行っている。現在、社員の3/4が女性。平均年齢32歳、半数以上がUIターン。訴求ポイントは、IT革命の社会的インパクトによる業界の価値や、創業者が実現したい世界観といったロマンをしっかり語ること。それに加え、時代を先取りしたリモートワークや近距離住宅手当、アニバーサリー休暇、男性の育休取得率100%といった働きやすさに対する各種制度をPR。求人応募は年間2,000件ほどあり、現在42名の社員数を100名まで増やしたい。といったお話がありました。

新潟県立大学教授の小池先生からは「市民目線で見る子育て世代の就業課題とそれを支える市民活動事例」を共有いただきました。

子どもには、家庭と学校に加え3つ目の居場所が必要で、多様な立場の人や価値観と出会う場であり、主体的になれ強制されない場であることが大切。子どもにとって暮らしやすいまちになっていくことが、結果的に暮らしやすい新潟になる。こども食堂などの取り組みで3つ目の居場所の創造を目指しているといった話しが共有されました。

市民活動団体のウィメンズヘルスlabを主催する平澤さんからは「子育てを支える市民活動の事例」についてお話しいただきました。

行政などによる妊娠中や出産に向けての支援がコロナ禍で希薄になり、不安を抱える女性が増えた。また、産後うつの人が増えるなどの現状があり、助産師が集まりプレママを支える企画をはじめた。柔軟に相談窓口を開設させ、相談者に寄り添った対応を行っている。それによりニーズに応えることができている。といった取り組みが紹介されました。

そして最後は上村先生をモデレーターに、長谷部さんや、立川さん、小池先生、平澤さんの5名でパネルディスカッション。「 企業×NPO× 行政 働きたい!暮らしたい!新潟をどうつくる? 」をテーマに意見を交わしました。

地元住民が地域に対してネガティブで、外から来た人は新潟をポジティブにとらえている傾向があるのではないか、という参加者からの声がありました。これを受けてパネラーからは、多様な経緯と価値観をもった人が暮らしているまちになるといいのではという意見がありました。

また、新潟の人は自分の暮らしを肯定していても、表現下手で口では否定的な言い方をする人が多い印象。子ども食堂や地域の拠り所でも、住民たちが安心して集えて支え合えるいい地域だねって思えるような場面をたくさん作っていくっていきたいという話しがありました。そして企業側からは、自分の仕事を誇れるような場面が増えるといい。自分が好きなことは積極的に言葉にすることで、新潟の良さを対外的に伝えていけるのではないかといった意見がありました。

他にも、新潟暮らしでは地域によって雪に悩ませられることも考えられるが、課題をよくよく見ていくと、周りに共有する人がおらず、孤立している状況である場合が少なくない。周囲の人と協力してイベント的に楽しく雪かきできれば課題にならないこともあるのでは、といったお話しもありました。地域のつながりや、市民活動が充実したまちは、課題になりうることもポジティブなまちの要素として捉えていくことができるかもしれません。

新潟市という市町村名を万代市などにしたら、まちなか暮らしができそうな印象になるのではというアイディアも。人口流出を止める策を考えるのではなく、移住先として選んでもらえることを考えていきたいといった話があがっていました。

会場の参加者からもたくさんの質問があがり、それぞれの方が課題を感じ今回参加してくれたことが伝わる、あっという間の3時間でした。

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