きょうからキョウドウ通信vol.99

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[きょうどう?通信]

豊口「協」さん

豊口協さんが長岡を離れてもう1年が過ぎた。
30年近く住んだ青葉台の家を引き払って鎌倉に戻る日、長岡インターを通り越して長岡造形大学に立ち寄ってくれた。車を降りると、感慨深そうに校舎を見上げ、そして出迎える私たちに目を細めた。

豊口協さんは、松下電器のデザイナーとして活躍した後、東京造形大学の学長を経て、長岡造形大学の初代学長を務めた。また、グッドデザイン賞審査委員長としてデザインの役割と可能性を大きく広げることに貢献した。
豊口先生(私にはこの呼び方がしっくりする)とは、1991年2月に長岡造形大学設立の仕事でご一緒したのが最初だ。淡々と、でも信じられないくらいの前向きさで大きな夢を語り、「きっとできるよ!」と言葉を結ぶのが常だった。キャリアや性格などがそれぞれ違うスタッフの個性と自主性を大切にしながら、いつも「いいねぇ」と乗せ上手に一人ひとりのやる気を高める達人でもあった。

「協」という名前の人に出会ったのは初めてだった。『漢和大事典』(学研)によると、「協」という字は、力を合わせる意の「劦」という会意文字と十印(ひとまとめの意)が合わさった文字とある。まさに、リーダーとしての豊口先生にピッタリの名前だ。
このころ私はまだ「協働」という言葉に出会っていなかったが、振り返れば私にとっての「協働」は、「豊口協と働く」のがその出発点だった。それから20年ほど後、長岡市に新しくできた(全国的にも珍しい)市民協働部の部長として、多くの会合や団体の活動の場に出向いて「協働」の意味と意義を話す自分がいた。
「協という字には3つの力があります。例えば、地域の力、NPOの力、行政の力。違う立場、違う経験、違う感性、違う能力。その違いを生かすことで、協働の価値は高まります。お互いを理解し、対等で自立した関係をつくり、共感をもって目的を共有する。それぞれの長所を生かしたり、補い合ったりすることで、新たなチャレンジが可能となります」

ところが「協」の字には続きがあった。1年前の豊口先生の送別会の席。私がここぞとばかりに「私の協働は豊口協さんと働くことから始まりました」とあいさつして戻ると、先生は握手で迎えてくれながらこう言った。
「ありがとう。でもホントはね、もともとはりっしんべんの『恊』という字だったんだよ。この字が使えないというので、今の字になってしまっているんだけど…」
「えっ、そんな字があるんですか?」
取り急ぎ手元のスマホで調べると、確かにあった! 常用外漢字、JIS第2水準。翌日、図書館で一番厚そうな『大漢語林』(大修館書店)を開く。
恊…①かなう。合う。一致する。和合する、合わせる ②=協 →『設文』(中国最古の字書)では、協は衆人が力を合わせる意、恊は衆人が心を合わせる意とする。

なんだかすごい発見をした気分だった。市民協働センターも市民恊働センターにした方がいいんじゃないかと思ったくらいだ。やっぱり協働は「共感」が大切なんだ!

文・NPO法人市民協働ネットワーク長岡 副代表理事
  河村 正美

「今日どう?通信」とは 「今日どう?通信」はNPO法人市民協働ネットワーク長岡の事務局・理事その他関係者が、市民協働をテーマに日ごろ感じたこと、気づいたことをしたためるリレーエッセイ・コラムです。

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